第59回全群馬近代こけしコンクールを鑑賞して

群馬県で昭和35年から全群馬近代こけしコンクールが年1回開催されています。このコンクールは群馬県で新型こけしの生産が盛んになるとともに、産業促進を目的で始まりました。平成最後の今年は第59回目を迎え2月6日から2月10日までいつも通り群馬県庁1階の県民ホールで行われましたが、寒くて風が非常に強かった8日の金曜日に鑑賞に行ってきました。このコンクールは第1部が芸術的価値のある一品作の「創作こけしの」、第2部は商業的価値のある「新型こけし」、第3部が「木地応用品」、第4部「一般の部」に分かれています。今年は、創作こけしの出展策は60点、新型こけし145点、木地玩具25点、一般の部51点でした。

(入口の看板)

(会場風景)

創作こけしに話を絞りますと、このところのコンクールの傾向としてケヤキやエンジュの様な木目の美しさを前面に出して表現し、彩色を抑えた作品が増えている気がします。特に最高賞の総理大臣賞の受賞作はここ数年ほとんどが彩色に乏しいものになっています。

これには鑑賞する側の志向もあるのでしょうが、彩色の無い場合は造形的な新規性が求められるので、新しい表現などが見られないと、ともすすれば味気の無いものにもなってしまうことがあるので、制作する作家の方々の御苦労も多いと思います。

またミズキ、イタヤ、センなどの白肌の美しい素材に色彩豊かな彩色を施した作品がもう少し出展されると一層華やかになるのではと思いました。

さて、今年の最高賞の総理大臣賞は藤川和美さんの「ときめき」という作品でした。ろくろで粗削りをした胴体を彫刻で大胆に削り奥行きを持たせ、少し首をかしげた顔は乙女のときめきを熟達した技術で表現しています。また作者に聞いてみないとわかりませんがチークオイルかニスかあるいは薄い茶の絵の具でしょういか、胴体に施された彩色が木目の美しさを際立たせ、立体感を演出していて、全体として格調のある作品だと思いました。藤川さんは本コンクールで何度も上位の賞を受賞されている実力者なので、今回の受賞もうなずけるでしょう。

(ときめき)

一方で中堅、若手(私の感覚ではこの世界では60歳以下は中堅で、50歳以下は若手の部類だと思っていますが)の皆さんの作品も心惹かれるものが多くありました。
最初に目に留まったのは岡本義弘さんの「月と星」です。月を擬人化し、そこから放たれる光の漏洩に微かに光る星の輝き、吸い込まれるような夜空の色合い、全体から感じさせる安穏とした印象がとても素晴らしいと思いました。

(月と星)

岡本さんの作品は毎回楽しみにしているのですが、全体として造形的に新しい方向の斬新な構成と、色彩感覚に優れた新境地を開拓しているような作品が多く見られると思います。義弘さんの弟の弘之さんの作品「夕凪」も新感覚な色彩で、新鮮な作品だと思いました。

(夕凪)

また五十嵐祐介さんの「the day」も胴体に施した太陽と、地球をモチーフにしたのでしょうか、その紋様がいいアクセントになっていて、優しい顔つきと相まって全体のバランスも優れていると感じました。

(the day)

藤川衛一さんの「白い砂浜」は真夏の浜辺の様子がよく表現された面白い作品だと思いました。

(白い砂浜)

中堅の宮川雄一さんは量産ものの制作が忙しく、なかなか一品物を作成する時間がないそうですが、この人の手掛ける作品は造形的に新鮮なものが多く毎回楽しませてくれます。今回の出品作は「爛漫」という白生地に美しい桜をあしらった清楚な作品だと思いました。

(爛漫)

ベテランの域に入った作家の方の作品の中で、ひと際異彩を放っていたのが沖泰宣さんの「風読み」、「白南風」の2作品だと感じました。こけしにはいい意味で多かれ少なかれ土着性があるのですが、沖さん大概の作品にその匂いは感じられず、現代的でありかつ大衆迎合的でないものを感じます。各作品はメーセージ性を含んでいて、常に見るものに何かを投げかけているようです。またその造形も彩色も今までの創作こけしでは余りお目にかかったことがないような革新的なものだと思いました。

(風よみ)


(白南風)

まだまだ作品を挙げるときりはないのですが、今回のコンクールで感じたことは群馬のこけしが長年培ってきた技術の高さを基礎に制作された多くの佳品を観賞することができ、また若い作家の方々の新しい感覚の作品に触れられて、とても楽しむことができました。来年もどんな素晴らしい発見ができるのか期待を膨らませて帰路につきました。